オリッシーの歴史

現在インド舞踊には、九種類の古典舞踊と沢山の民族舞踊があります。

オリッシーは、古典舞踊の代表的なものの一つで、古くから踊られていた伝統舞踊です。東インド・オディッシャ州のヒンドゥー教の聖地プリーという町にあるジャガンナータ寺院で、マハリと呼ばれる巫女がクリシュナ神とラーダ-の愛を綴った”ギータ・ゴーヴィンダ”(十二世紀ジャヤ・デーヴァという詩人の代表作)を朝・夕にわたり演じ、踊りや歌を奉納したことが始まりとされています。当時踊りは秘儀とされていたため、マハリは、寺院以外では決して踊ることはありませんでした。

十五世紀中頃、アフガニスタンのムスリムの攻勢によって、すべてのヒンドゥー教の宗教儀式は中断され、十六世紀にはいりゴティプアと呼ばれる女装して着飾った少年達が、出現しマハリに変わって寺院以外での祝い事に招かれ舞踊りました。そしてゴティプアの存在により、初めて一般大衆の人々も踊りを見ることが出来るようになりました。ゴティプアの踊りは、大道的で観客に見せ楽しませることをメインにしているのでアクロバティックを得意としていました。ですがゴティプアの伝統もだんだん衰退して行きます。

インド独立後、文化復興の高まりの中、三人の偉大なグル、グル・ケルチャラン・モハパトラ、グル・デバプラサッド・ダス、グル・パンカジチャラン・ダスと研究者や音楽家やダンサー達によって、1950年代にわずかに残っていた踊りと文献や寺院に掘られた彫刻を元に研究と努力を重ね、再構築し、オリッシーと名付けられ古典舞踊として復興しました。

偉大なるグルの中でもグル・ケルチャラン・マハパトラは、ゴティプアダンサーとして最も優れた業績をもつ偉大なグルジ(師匠)です。グルジの活動によって現在のオリッシーは、技術的にも審美的にも発展を遂げてきました。

◎マハリ時代
マハリ(五人の神々の花嫁達)

◎ゴティプア出身の偉大なるグル(師匠)
☆Late・Guru・Pankaj・Charan・Das

☆Late・Guru・Kelucharan・Mohapatra

☆Late・Guru・Debaprasad・Das


現在オディッシャでは、大きく分けてケルチャラングルジとデバプラサッドグルジの二つのスタイルがあると言われています。

他にも沢山の偉大なグルがいますが簡単に大きな流れを書きました。私の師であるラトナ・ロイ氏はグル・パンカジ・チャラン・ダスのマハリスタイルを伝承し、ガンガ―ダールグルジは幼少時代ゴティプアのトレーニングを受け、その後Utkal Sangeet Mahavidyalaの学生になり、パンカジグルジ、デバプラサッドグルジ、ミナティ・ミシュラ女史の下一層のトレーニングを積み、更にケルチャラングルジから高度な技術を学ばれたグルなので偉大なる三大グルの演目を教えて頂きました。

今はもともとのマハリスタイルを知るグルジはほとんど残っていないそうです。インドで学べるすべてはゴティプアスタイルによるものでデリーに渡ったグルジのスタイルとオディッシャで発展した踊りのスタイルに海外のグルと調べれば現在では、グルジの数だけスタイルがあるのではないでしょうか。止まることなく日々発展し続けています。

インドでは芸能は、人が神々や英雄達と交わるためのものと考えられており、そのために踊りは、非日常的な時間という感覚で夜に行われることが多く、場所も異界と接するところ、という意識がもたれています。踊り手の入念な化粧と手の込んだ装身具は、神を迎える準備として自らが非日常な存在へと変えて行く過程として必要不可欠なものなのです。
~アジア舞踊学より~

私がインド舞踊にハマッたのはこういった儀式的なところでもあります。自分のエゴを捨てただ神に踊りを捧げ偉大なる神の大きなエネルギーに包まれる。あの瞬間あの感覚は何なんでしょう?言葉では言い表せない至福の時。

インド舞踊のGuru Shishya Parampara(師弟制度)は、とてつもなく排他的な面がありますが、長い年月、師匠から弟子へと教えを口承伝承し、厳しい日々の特訓に耐えた選ばれし者たちによって、大切に受け継がれ、素晴らしい踊り手の舞は私達を魅了します。この奥深い伝統芸能に魅了された私達外国人にとって、技術や振りを真似ることが出来たとしても、本当の意味で踊りを理解し・学び・習得することは容易ではありません。生涯をかけて、どこまで学べるのかわかりませんが、インド舞踊を通して、多くのことを学び、祈ることで感謝の気持ちを知り、踊ることで人の温かさに触れ、人の笑顔が自分の生きる喜びになると教わりました。6歳の頃から、バレエ・ジャズ・モダン、そして、バリダンスを少し学び、ダンス歴は長いのですが、ODISSIほど魅了されたものは他にはありません。この踊りに出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

Photo credit Mr.Debojyoti Dhar